狼社長の溺愛から逃げられません!
がっくりと肩を落とすと、社長がこちらに手を伸ばし私の濡れた髪を耳にかけてくれた。
「社長はどこかに出かけてたんですか?」
「あぁ。これからちょっと、前の会社の知り合いの家に顔を出しに行こうと思ったんだけど……」
「そうなんですか!? すいません予定があるのに!」
約束の時間とか大丈夫なのかなと焦ると、社長が笑った。
「いや、別に夕方くらいにふらっと顔を出すって言ってあるだけだし、少しくらい遅れてもいい相手だから気にするな。それより、偶然困ってるお前を見つけられてよかった」
優しい口調で言われ、顔を上げると微笑みかけられた。
「社長……」
甘く笑いかけられ、顔が赤くなる。
ドキドキしながら社長を見ていると、その肩が微かに揺れ出した。
「それにしても、雨の中で途方にくれるさっきのお前の情けない顔……っ」
さっきの私の姿を思い出したんだろう。
社長はじわじわとこみ上げる笑いに、耐えられないというようにうつむいて吹き出す。