狼社長の溺愛から逃げられません!
社長の車で家まで送ってもらい、持ちきれない荷物を部屋の前まで運ぶことまで手伝ってもらってしまった。
部屋の鍵を開け、玄関に荷物を置いてふーっとひと息つく。
「本当にありがとうございました」
そう言って頭を下げると、社長は頷いて外の通路に出ようとする。
そのうしろ姿に、思わず腕を掴んで引き止めた。
「社長……っ!」
「なんだ?」
肩越しに見下され、ドキドキしながら口を開く。
「あの、狭い部屋ですけどお茶でも飲んでいきませんか?」
こんなにお世話になったのに、なにもお礼せずに帰らせるなんて申し訳なくてそう言うと、社長の眉間にシワがよった。
「お前なぁ、相変わらず腹が立つほど警戒心ゼロだな」
怒ってる? 私が部屋に誘ったから?
「迷惑をかけてしまったので、なにかお礼がしたかったんですけど……」
社長の不機嫌そうな顔に、首を傾げてからハッとする。
「社長をこんな狭い部屋に招くなんて失礼ですよね」
慌てて掴んでいた腕を離すと、はぁーっと長いため息をつかれた。