【完】雨ふって、恋、始まる。


あれから、3年もたった。いろんな出逢いがあった。


ちょっと素敵だなって思う男の子もいた。


でも、その人は、わたしの〝特別〟じゃなかった。


考えるのは、いつだってセイくんのこと。


ちゃんと寝てるかなーとか。ルームシェアしてる家でも餃子作ることあるのかなとか。


この期に及んで、まだセイくんのお嫁さんにしてもらいたいなんて思ってる。


この恋が無謀なことくらい、わたしが一番わかってる。


それでもわたしは、どこかでセイくんを待ってる。


好きだから……。


ふと、いま歩いているのが、ちょうどセイくんと出会った場所だと気づく。


ここで、あなたは、雨に濡れていた。


わたし、わかったかも。あの日、どうしてセイくんがここにいたか。


きっと、辛かったんだよね。


いくら華やかな舞台で歌っていて、女の子たちからキャーキャーいわれても。セイくんにはセイくんの悩みがあったんだと思う。


あのとき、気づいてあげられなかったことがある。


セイくん……泣いてたんじゃない?


帽子かぶってたのに顔まで濡れていたのは……


涙、だったんじゃないかな。




ねぇ、セイくん。


あなたがこの街にきたのは__逃避行だった?

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