【完】雨ふって、恋、始まる。
セイくんにバイバイしてから、いろんなセイくんをメディア越しにみてきた。
レンズの向こう側にいるセイくんは、いつだって輝いていた。それはもう、悩みなんてひとつもないって顔で。
聞かれた質問に、一番求められる解答をして、周りを喜ばせていた。
フェロモンを振りまく色気たっぷりなアイドル__それが、世間の求めるセイくんのイメージ。
その期待に、セイくんは応え続けた。
間違ってない。それはセイくんの良さだし、それを武器に仕事してるから、間違ってはないんだ。
でも、ずっとそれじゃ、息がつまっちゃいそう。弱音を吐きたいときも、休みたいときも、イメージと違うことしたいときもあるはず。
それを、セイくんはため込んでるんじゃないかな……。
わたしは、餃子職人みたいなセイくんも。お父さんの部屋着を着るセイくんも。
どんなセイくんも、好き。
空を、見上げてみる。学校を出たときよりも暗い。
この空は、セイくんのいる街と繋がっている。だから、空を見れば元気が湧いてくる。
「……会いたいよ、セイくん」
好きな気持ちも、溢れてくるよ。
「__美琴」
……え……?