【完】雨ふって、恋、始まる。
振り返ると、そこに__セイくんがいた。
身一つで。
「セイ……くん?」
「ただいま」
「え、お仕事は?」
「テレビ見てないの?」
「さっきまで、学校だったから……」
「辞めてきた」
「は?」
「アイドル」
「……なんで?」
「一段落ついたら、やめようと思ってた。というか、美琴と出会ったときには、もう続ける気なかった。それでも今日まで頑張れたのは……」
目の前まで歩いてきたセイくんが、そっとわたしを抱きしめた。
「美琴のおかげだよ」
「わ、わたしの……?」
「あの日、僕に元気をくれたから」
「……お母さんの、餃子パワー?」
「あはは。それもある。美琴、ずっと励ましの手紙くれてたし」
「読んでくれてたの!?」
「うん。返事書けなくてごめんね」
「い、いいよ。くだらないひとりごとばかり書いてたんだから」
「そんなことない。あれがあったから、頑張れた」