【完】雨ふって、恋、始まる。
セイくんは、続けた。
「何度もこの町に足を踏み入れようとした。忙しい毎日だけど、少しだけ滞在するくらいならチャンスあったし」
「そうなの……?」
「でも、ここに来てしまうと、あっちに戻るのが嫌になりそうで。中途半端なことをしてしまいそうで怖かったんだ」
「……そんなに、辛かったの?」
「辛いよ」
「大変なお仕事なんだね」
「そうじゃない」
わたしを抱きしめるセイくんの腕に、力が入る。
「セイくん……?」
「美琴に会えないのが、一番辛かったよ」
__!
「美琴に僕の気持ちも伝えられずにいたし」
「……セイくんの、気持ち?」
すると、セイくんが、とびきりの笑顔を見せてくれた。
その姿は、フェロモンを振りまくアイドルでもなんでもなくて
__等身大の、19の男の子だった。
「好きだよ、美琴」