【完】雨ふって、恋、始まる。
言葉にならないほど嬉しくて__涙が出た。
そのとき、ポツポツと雨が降ってきた。
「セイくん、雨男?」
照れ隠しで冗談まじりにそうたずねるわたしに
柔らかく「そうかもね」と笑い、そっと涙を拭ってくれるセイくん。
「髪……伸びたね」
「3年たてば、髪も伸びるよ」
「可愛くなったね、美琴」
「……!!」
「彼氏できた?」
「バカッ……、いないよそんな人」
「モテるでしょ」
「それは、セイくんでしょ。いつも女の子に囲まれてて……」
「そういう仕事だったからね」
ほんとに、やめちゃうの……?
「……そうだっ」
鞄から、折り畳み傘を出した。
「準備がいいね」
「でしょ?」
お母さんに持たされただけなんだけどね。
「ねぇ、美琴」
「ん?」
「入れてくれる?」
「え、そりゃあ……」
「その傘に入れてくれたら、お礼に、僕の身体貸してあげる」
__!!
あの日の台詞と、まるきり一緒。
傘に入れてあげたら、そのお礼にってスーパーで買った荷物を運んでくれたよね。
「鞄くらい持てるもんっ」
「違うよ」
「え?」
「そういう意味じゃなくて」
……?
「美琴の好きにしていいよ__僕のこと」
耳元で、そっと囁かれる。
「……っ、バカ!!」
「あ、照れてる。美琴も成長したね?」
「い、行くよ!!」
「お母さん元気?」
「元気すぎるくらい元気だよ……」