幼なじみとさくらんぼ7/8
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そして日曜日になり、花火大会当日を迎えた。
約束した時間にハチと会場に行くと、美樹ちゃんが「先ぱーい!」とこっちに手を振っていた。
どうやらまだ田村くんは来ていないようだ。
「美樹ちゃん、浴衣可愛いね!」
ピンク色のアサガオ模様で、椿のかんざしもよく似合っている。
きっと田村くんのために着てきたのだろう。その心情だけで私は頑張れと力が入ってしまう。
「あ、こっち!」と、ハチが手招きする方向には田村くんの姿が。美樹ちゃんを見ると、すでにガチガチに緊張していて、私もなんだかソワソワしてしまう。
「け、圭介先輩……!」
私が美樹ちゃんのことを話す前に、美樹ちゃんは自分から声を出した。
「わ、私、富永美樹って言います。圭介先輩とは同じ中学出身で、あの……」
「うん。知ってるよ。陸上部だったよね?」
「お、覚えてくださってたんですか?」
「うん、覚えてるよ」
美樹ちゃんはすでに泣きそうな顔をしていた。
私は事前に田村くんになんの説明もしてなかったし、もう少し戸惑ってしまうかなって思ったけど、そうならなくてホッとした。
もしかしたらハチが田村くんに『後輩の子がくるよ』と伝えてくれていたのかもしれない。
協力しないなんて言っていたけど、ハチが誰よりも優しいことは私が一番知っている。
「とりあえず集まったし、歩こうか」
私たちは花火がはじまるまで、出店でなにかを食べることにした。