過去形はきっと、全てが思い出
0話 それは、寒田葵の最後
もし、また会えたなら。君は、どんな顔をしてくれるんだろう。

最初は君を『ツンデレ』とさえ思っていて、あんまり好きじゃなかった。

いじられキャラで顔を真っ赤にしてたっけ。

「……っるせぇ!そんな事考えて……ねぇ、し……」
って。

やっぱり、格好いい人がタイプだし、うわーって思ってた。
でも、私は君と地球の色を話したあの日から、いいかもと思いはじめてた気がするよ。
自分に、似てる感じがしたんだ。
この人なら、私の話を分かってくれると思った。
この人も、何か問題を抱えてると思って、ほっとけないと思った。

あ、もちろん、似てるところだけじゃないよ!?
いい意味で!

皆に認めて貰おうと、努力を重ねているところを私は知ってる。
なんだ、格好いいじゃん、と思った。
ツンデレもチャームポイントに変換されるくらい。

私達は付き合うことになったね。

それからは、もっと楽しかったよ。
晴れの日も雨の日も、雷の日も、曇りの日も。
暑い日も、寒い日も。
平日も休日も。
ずっと君のことを考えてる。
ずっと君を見てる。

灰色だった私の世界を、虹色に彩ってくれた君のために、私は生きたい。

何にもなくなっちゃつた八年前以降で、初めて生き甲斐を感じさせてくれた。

胸を張って言おう。
私は君が好き。
後悔なんてする訳ない。一緒にいられた時間が一番幸せだった。

ずっと見てるから、見守ってるから、安心してね?

だから、私は君が死ぬ運命だと知っていて、それを変えるために、私に起こることとして置き換えた。
大切な、人だから。

歩道橋に登って。
ある人が待ち伏せしてた。
人通りの少ないこの歩道橋に、毎日時間ピッタリにやってくると知っていた人達が、待ち伏せてた人達。
その一人が押した。

笑顔で落ちてくるよ。

私は、君が私の事をどう思っていたとしても構わない。
ずっと、覚えてるから。
私が望むのはただひとつ。

生きて───。
君はたくさんの人の救いになる。
昔の君が今の君の救いになる。
綺麗事は、世界が綺麗だと思える素晴らしい言葉だと、教えてくれた君だから。


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