振った男 振られた女〜20年〜
結婚を機に 地元を離れた

彼に会う心配のない土地は
私を安心させた

新婚生活は穏やかに過ぎた
しかし その頃 病院でケガをした
それは 医療ミスかも知れなかった

このケガは今も私とともにある

出張がちの主人と 動かぬ体
産まれたばかりの子供 病院との折衝

私は疲弊した

転勤先の土地では
裁判を怖れる開業医に
診察を拒まれることもあった

それでも 転院の先々に
彼がいないことは安心だった

何年か経って私は東京にいた

東京での通院のため
病院を探すうちに
彼が東京にいると知った

もう何も関わりがないこと

そう思っても
また 泣いていた

何年も前の言葉が
たった今のように私を責めた

私が泣いている理由は
誰にも知られてはならないことだった


紹介先が彼の病院でなくてよかった



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