いつかの涙をずっと
変な子
セミの鳴き声が暑さを倍増させ、むわっとした、生暖かい風が部屋に流れ込んできた。


瑠奈(ルナ)は慌てて窓を閉め、ピッとエアコンのスイッチを入れた。



いつの間にか、設定温度が27℃になっている。



一瞬、眉間に皺をよせ、温度を22℃まで下げた。



そのままベットにゴロンと横になり、ぼーっと天井を見つめる。



高校3年の夏だと言うのに、受験勉強もせずに何をやってるんだと、自分に問うてみるが、身体は起き上がらない。



瑠奈は、ベットに投げ捨ててあったスマホを手に取り、腹ばいになって、ツイミャスを開いた。



ツイミャスとは、最近話題のインターネット上での無料の生配信サービスである。


色んな人が歌ったり、踊ったり、色々話したりしている。


それを聞いて、コメントをしたり、ツイミャス限定の猫アイテムをプレゼント出来たりする。




「………今日、マリネさん配信してないんだ。」



お気に入りの配信者が今日は配信しておらず、軽くショックを受けながら、色んな人の配信をみてまわりはじめた。



まだ朝の9時だと言うのに、たくさんの人が配信をしている。



「ふわぁ、、ねむっ、」



大きなあくびをすると、またゴロンとあお向けになり、歌い手さんの配信を聞いた。


「………なんか、テンションあがんないなぁ、、」



いつもならツイミャスを観れば上がるはずのテンションも、暑さのせいか、それとも、

連絡が来ない彼氏のせいか。




ツイミャスを閉じて瑠奈はLIMEを開いた。



彼氏とのトークを開くが既読はついていない。


高校2年から付き合いはじめた同じクラスの男子。


早野翔(ハヤノ カケル)


趣味が同じで話してるうちに好きになるという、良くある恋愛パターン。


付き合った当初は、返事もすぐ返ってきていたのに、今では5時間後、酷い時では3日後。



付き合って長いとはいえ、やはり不安は募る。



「うーん、、忙しいのかな、?」


翔は県内で一番頭がいいと言われている国立大学を目指している。


きっと勉強で忙しいんだ、と自分に言い聞かせる。


瑠奈はまたゴロンと横になって、ツイミャスを開いた。



「かみのかなと、?」


かなと、弟と同じ名前だ。



何となく興味がわいて、その人のツイミャスに入った。



「……で、俺はー」

ちょうど歌が終わって、配信者が話していた。




なんか、すごく好きな声だなと思った。


低くもなく、高くもない。


この人のこと、もっと知りたい。


純粋にそう思った。



「よし、コメントしてみよっ、、」


"はじめまして!とっても素敵なお声ですね!"



差し当たりのないコメントをする。


「お、初見さん。ありがとうございます。」




うん、やっぱ好きな声。




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