いじめっ子には愛の鎖を
2. いじめっ子に食べられる
定時ぴったりで退社した。
そして、小走りで家への道を急ぐ。
淳太君のことを考えると、胸が熱く顔がにやけてくる。
気を抜いたらスキップさえしそうだ。
だけど……
「自惚れるな」
淳太君はそう言った。
想像していたことだけど、三年前に両思いになったからといって、あたしたちの関係が劇的に変化したわけではない。
あたしはまだ、淳太君の下僕のままなのかもしれない。
嬉しさと不安とともに、家の扉を開ける。
薄暗い室内に眩しい外の光が差し込んだ。
玄関には、茶色い革靴がきちんと並べてられており、洗濯機には、たくさんの服が詰まっている。
そして、ほのかに淳太君の香りがして、それがあたしの鼻腔をくすぐる。
胸を焦がし一歩また一歩と進み、リビングの扉を開ける。
すると、そこにはTシャツにジャージ姿の淳太君が立っていて……
「桃華、ただいま」
あたしに向かって手を伸ばした。
その大きな腕の中に飛び込んでいた。