好きな人が現れても……
食べることに集中しなさいと諭してから、彼女が立っていたキッチンへと目を向けた。
あの場所に妻の千恵(ちえ)が立ったことは一度もない。ガンが発覚してからずっと入院生活を送ってたからだ。
俺の体を心配した両親が、近くに引っ越してこいと言った。その頃から実家には何かと世話ばかり掛けている。
だから、いつも母は口煩く言うんだ。
『真央の為にも新しい奥さんを貰いなさい』と。
(耳にタコだな…)
真央に視線を戻した。
千恵以外の女性を視界に入れることを、俺はずっと放棄している。
最初の頃は難なく出来た。
しかし、この頃は時々無理をするーー。
「ひろー、お替わりあるー?」
空になった器を差し向けて真央が聞く。
プハッと吹き出し、「もう無いよ」と答えた。
「ちぇっ、もう少し食べたかったのにー」
それを聞いたら横山葉月は喜ぶだろう。
自分にも姪や甥がいると言ってたから、同じ感覚で真央にも作ってくれたのだ。
「また作ってねって言っといて」
「真央、それは出来ないとさっきも言っただろう」
あの場所に妻の千恵(ちえ)が立ったことは一度もない。ガンが発覚してからずっと入院生活を送ってたからだ。
俺の体を心配した両親が、近くに引っ越してこいと言った。その頃から実家には何かと世話ばかり掛けている。
だから、いつも母は口煩く言うんだ。
『真央の為にも新しい奥さんを貰いなさい』と。
(耳にタコだな…)
真央に視線を戻した。
千恵以外の女性を視界に入れることを、俺はずっと放棄している。
最初の頃は難なく出来た。
しかし、この頃は時々無理をするーー。
「ひろー、お替わりあるー?」
空になった器を差し向けて真央が聞く。
プハッと吹き出し、「もう無いよ」と答えた。
「ちぇっ、もう少し食べたかったのにー」
それを聞いたら横山葉月は喜ぶだろう。
自分にも姪や甥がいると言ってたから、同じ感覚で真央にも作ってくれたのだ。
「また作ってねって言っといて」
「真央、それは出来ないとさっきも言っただろう」