好きな人が現れても……
だけど、何故かそんな風に簡単に聞き流せなかった。
紺野が横山にキスをしたから、彼女は俺にあんな告白の仕方をしたのか……。


「……同じ事はするなよ」


そう呟いてからハッとしてしまう。
えっ?と顔を見上げる紺野に、いや、反省してるのなら…と付け足した。


「はあ…そうですよね…」


今一つハッキリしない答え方にイラッとくる。
横山の方は紺野のキスがショックではなかったのか。


それで、あんな言葉を俺に……
そうとしか思えない。


「…俺、横山とは同期入社で、一年目に同じチームで働いたんです。
その頃は彼女がいたからあいつの魅力には気付かなかったけど、この最近何度か話す機会があって、話してたらいい奴だったな…と思い出して。

…横山のヤツ、何かと言うと人の頼み事が断れなくて、バカみたいにお人好しで真面目な性格なんっすよ。

だけど、あれでいて意外にもガンコで、顔に出さないから思ってることも分かり難いけど、笑うとホント可愛くて……」


ほぼ惚気だな…と思うようなことを平気で話す紺野を見ながらこいつも可愛い男だなと思った。


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