好きな人が現れても……
「横山!」


駆けて来たのは子犬のように人懐こい性格の紺野君。
二次会の誘いを断り、私を追いかけて来たらしい。


「意外に足が速いな。今夜ゆっくり話せなかったろ。今から何処かで飲み直さない?」


金曜日の夜だから明日は仕事もない。
いいよ、と応じて、二人で歩き出した。



「モテモテだったね。紺野君」


思い出して言うと、彼は困ったような顔をした。


「モテモテ言うなよ。おかげで二次会出るなって散々仲間達に牽制されてたのに」


「そうなんだ。やっかみ受けて大変だね、モテ男君は。きっと彼女も心配してるんじゃない?ピンチヒッターとしてとは言え、急に合コンに誘われてさ」


少し飲んでるせいか言葉がスラスラ出てくる。
でも、足取りはしっかりしてるし、頭もフラついてないから安心して歩ける。


紺野君は私の言葉にうん…と小さく返事をして、それからボソッと小声で言った。



「……俺達、別れたんだ。…あいつ、オフィスの上司とできちゃってさ…」


ドキン!と胸が鳴って、え!?と彼を見直した。

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