好きな人が現れても……
名前だけ言うとまた隠れてしまい、それを見た相川さんは呆れる。


だけど、なんて可愛らしいのだろうか。
真央ちゃんと同じくらいなのに正反対だ……。


ぼかんとして二人を見た。


それにしても、知らなかった。
相川さんが子持ちだったなんて。


「何よ葉月、その意外って顔つきは」


半ば仕様がなさげにしてる。
オフィスでは子供の陰すらもちらつかせずに仕事をしてるのだから当然だ。


「私が子育てしてるイメージが湧かないんでしょ。こう見えても一児のシングルマザーなのよ」


歩き出したながら話してくれた。
娘さんは美杜(みもり)ちゃんといって五歳。
オフィス街にある保育園に預けてて、ついさっきようやく迎えに行けたらしい。


「販促部は残業も多いじゃない?寂しい思いをさせてるとは思うんだけど……」


シングルマザーだからといって部署異動は望んでない。
子供はいずれ大きくなるし、働く自分の背中をきちんと見せてるから大丈夫だ…と強気で話す。


「でも、きっと寂しくて仕様がないですよね…」



「なに?喧嘩売ってんの?」


< 168 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop