好きな人が現れても……
「だから、どうしたらいいか……わからなく…て……」


止まってた筈の涙が溢れ落ちた。
子供の前で泣きなさんな…と窘められ、相川さんは私にペーパーナプキンを渡してくれた。


「葉月の気持ちは野村さんには届いてると思うよ。…ただ、あの人は一番幸せになれるべき時に奥さんを亡くしたの。

だから、人一倍いろんなものを背負った。それを今も捨てきれずにいて、自分をがんじがらめにして生きてるんだと思う。

私が偉そうには言えないんだけど、野村さんも私と同じで本心は語れないものがあるのよ。

例えば、どんなに可愛いと思う部下が目の前に現れてもね……」


言葉が途切れたところで料理が届き、とにかく食べましょ…と促された。


お昼はおにぎり一個だけだったからか、胸は一杯たったけどカルボナーラはお腹に入った。

食後は三人でかき氷を頼み、シェアして食事を終えた。




「ご馳走さまでした」


相川さんは私が誘ったから奢るわと言って聞かなかった。

次のチャンスがあれば今度は私に奢らせて下さいと願ってご馳走になった。



「ママー抱っこー」

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