好きな人が現れても……
「課長……此処でお昼ですか?」


今日は特別暑いですよ、と言われ、ああ、そうだな…とドアの隙間を見つめる。

揺らめくセメントの上には陽炎が立ち、軽く四十度以上はありそうな気配だ。


「今日は社食に行かれては?熱射病にでもなりそうですよ」


五感を失ってる俺を気遣うように問われ、答えずに目を外に向けた。



「課長…?」


再び横山の声が耳に入り、その声に振り向いてみた。


ホッとする顔が可愛かった。
大人なんだが、幼いようにも見える。


俺よりも十歳近く年下だった。
そう言えばそうだった…と思い出した。



「横山さんはどうして此処へ?」


言わずと知れたことだ。多分、俺を追って来たのだろう。


「私は杏梨ちゃん達と社食へ行こうとしてたんです。だけど、課長がぼうっとしたまま屋上へ向かうのが見えたから」


「それで?…追って来た?」


「はい。気になって」


真っ直ぐと目を見てそう言った。
掻き毟られるような感情が胸の奥から湧き出し、ドンと肩を押していた。


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