好きな人が現れても……
こっちはその顔を眺め、何が起きた…?と振り返った。

目を見開いて震える彼女を見て、初めて自分が犯した行為を思い出した。


とんでも無いことをしたんだと気づき、声も出せずに立ち尽くす。


俺のことを見つめたまま黙ってた横山は一粒涙を零し、それを機に一気に溢れ返った。


睨み付けてくる彼女の表情が歪み、何も言わずに走り去った。


それを追うことも出来ず、俺はその場所に崩れ落ちた。



(……どうしたんだ。……何故あんなキスを彼女に……)



唇を手で覆って愕然となった。
間違ってもしてはならないことを、俺はやってしまったのだ。


座り込んだ床の下から彼女の走り去る足音が聞こえてくる。


誰もいなくなったその場所で、俺はまた独りになった…と確信したーーー。



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