好きな人が現れても……
一緒に歩いてくれるパートナーなんていなくてもいいんだ。真央が居てくれたなら、それだけでいい。

あの子がいれば寂しさも紛れる。辛さも切なさも、何処かに葬り去ってくれる。
だから…」


ごくっと息を飲んで間をあけた。
私は彼を見据えて、次の言葉を待った。


「……好きな人が現れても恋はしない。横山さん、君も同じだよ」


強い光を目にたたえて囁く。
その言葉を聞いて、ぺたん…と床に座り込んだ。


はらはら…と目から涙が零れ落ちた。
課長の気持ちは分かるけど、それはあまりにも悲しい人生のように聞こえる。

私もきっと、好きで愛した人が先に死んだら傷付く。
後追いも許されず、この世界に取り残されたら口惜しい。

加えて課長みたいに子供だけ残ったら、その子の為に生きなくては…と必死になって働くだろう。

だけどーー


「課長はそれで幸せなんですか?今は良くても真央ちゃんはいずれ大人になって、誰かの元に嫁ぐ日が来るかもしれませんよ?

その時は一人になるんですよ?そしたら、今よりもっと寂しく感じるんじゃないですか?」


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