好きな人が現れても……
賑やかな声が聞こえてきたのは、その時だ。

廊下から聞こえてくるのは杏梨ちゃん達の声で、ウソー、とか見間違いなんじゃないの?といった言葉が飛び交ってる。

その声がどんどん大きくなったかと思えば、ガチャとドアが開いて彼女達が入ってきた。




「葉月!」


驚くような声がして、バタバタと杏梨ちゃんが走り寄ってくる。
どうしたの?と顔を上げると、悠長に構えてる場合じゃないよ、と叫んだ。


「知ってる?課長の指からリングが消えたんだよ!」


「えっ!?」


驚いて目を見張った。
杏梨ちゃん達もさっき気付いたらしく、それで見間違いなんじゃないの?と言い合ってたそうだ。


「社食でいろんな憶測が飛び交ってたの。離婚だろうか別居だろうか…て」


「離婚?別居?」


どちらもできる訳がない。だって、彼の奥さんは既に亡くなってるのだから。


茫然と杏梨ちゃん達の会話を聞いてた。
課長がもしもフリーになったら大変よね…と言い合う言葉にピクンと耳が反応した。


「課長を慕ってる子は多そうだし、本気出して次を狙おうと思う人もいるかもしれないね」


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