好きな人が現れても……
「彼とお話してみたいの。だから、もしも紺野君のテーブルに着くことになったら変わって」


「いいよ。別に」


傷心中から少し吹っ切れたようだった紺野君は、今夜の親睦会には来ると言ってた。

私のいる庶務課が幹事だから行ってやるよ、と参加者の書かれた紙を持って来た時に喋り、部内でもいろんな人に声をかけて誘ったからな…と偉そうにしていた。


お陰で営業部の独身男性の参加が多くて、庶務課の女子達は大喜び。
誰もが粧し込んできた中、私だけは普段通りの服装。


飲み会の席でいい服なんて着ても無駄だ。
タバコとお酒のニオイが染み付いて、帰るまでそのニオイを身に付けたままになる。

見た目どんなに女子らしく見せたって、そのニオイが染み付いてる時点で魅力が半減すると思うから嫌だ。


色々と言い訳じみた考え方をしてると、続々と参加者がやって来た。

課長は私達女子を見ると、お疲れさんだね…と労い、クジを引いて席に着いた。


一番隅っこの壁際のテーブル。
そこには新人時代にお世話になった販促部の先輩もいる。

相川仁美(あいかわ ひとみ)さんと言って、やたらと気の強い女性だ。

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