好きな人が現れても……
チャンスとばかりに立ち上がったけど、私は彼女にも結構お酒を勧められていて、立ち上がると頭がフラリとするくらいに酔ってる。


それでも、課長と話したくて寄って行った。
課長と部長は、家庭のことでも話し込んでるみたいだった。


重い声で部長が「早いな」と呟く。
何が?と思いつつ、更に寄れば、今度は課長がしみじみと「ええ」と言う。


暗い雰囲気の二人は何処か浮いて見えて、そぉっと聞き耳を立てながら窺った。


「じゃあ君は今はまだ一人で頑張ってるんだ」


「はあ、まあ色々と周りに助けては貰ってますが」


「大変だなぁ、よくやるよ」


「いや、そんなことないですよ。ただ、どんな状況であっても、子供に苦労をさせず、頼って貰える人間でいないといけないと気を張ってるだけです」


「偉いな。俺には真似なんか出来ないよ。自分を律せず、グダグダになってしまいそうだ」


「それは自分も同じでしたよ。でも、後を追う訳にもいかないですし」


「誰にも甘えられないなんて辛いよな」


「甘えてる暇もないとも言います」


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