好きな人が現れても……
きっといろんな話を小耳に挟んでただろう。

胸を痛ませながら飲んでたから、私があの場所へ来た時、やっと息を吐いて話せる人間が現れたと思ってお酒を勧めた。


思わぬ行動に出るとは知らず、日頃の私を知ってるからこそ多少飲ませ過ぎても大丈夫だろう…と、きっと思った。


まさか、一年以上も前から私が課長のことを好きでいて、ずっと片思いをしてるとは知らずにいた。


顔に喜怒哀楽が出難いのが災いしたのだーー。


そう思ったらは口惜しくて仕様がなくて、課長の背中を見たまま無言で涙が溢れだした。


無念だったろう奥さんの気持ちも理解できる。
残されて、ひたすら子供さんの為にだけ生きてる課長も可哀想で堪らない。

頑張ってるのにそう思ったらいけないのかもしれないけど、私は自分が思う以上に課長の現在がショックだった。



幸せに満ち溢れた生活をしてるのだとばかり思ってた。

奥さんと子供さんがいて、いつも家庭では笑ってばかりいるのだと。

自分の姉家族のように円満で、明るい未来だけがあるんだろう…と信じていた。



なのにーーー……



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