好きな人が現れても……
「横山さん」


振り向いた課長はボロボロと涙を零し続けてる私にギョッとして近寄って来た。
声を出したらいけないと思い、ぐっと唇を噛んで嗚咽を堪える。


泣きたいのは私じゃない筈だ。
この三年もの間、課長はずっと泣くのですら相当我慢をしてきてる。


オフィスでは段取りを組んで仕事をこなし続け、合間合間で私達をヤル気にさせる為に笑いかけ言葉を送る。

家庭ではお子さんのただ一人頼れる親として振る舞いながら、なるべく自分の親にも頼らずに生きてるのだ。


偉いとしか言いようがないのに。
課長のスゴさを改めて思い知った気がするのに。


私はそれすらも全てがショックで。
だけど、それを口にも出来ないから泣き続けるしかなくて……。



「……ごめん。そんなに泣くとは思わずに話した。
気に病まないでくれよ。妻が亡くなって三年も経つと慣れてしまった日常だからさ」


そんな風に謝られるとこっちはもっと辛い。

きっとそれは強がりか嘘だ。
課長にそんな言葉を言って欲しくない。



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