好きな人が現れても……
誰がいいだろう…と考え出す課長を見て、アッサリ諦め過ぎでしょー!と慌てる。


私が引き受けなかったらこのチャンスは別の人のものになる。
それを指をくわえて見ててもいいのかと思ったら、それは絶対に嫌だという気持ちが湧き上がった。



「私、そのお話引き受けます!」


箸を握って課長の方へ向き直った。


「簡単にできて調理もラクな料理なら色々と知ってるので」


毎日そういうのばかり作ってる。
任せて下さい、と胸を張ると、課長の顔が明るくなった。


「本当か。助かるよ」


スゴく安心したように息を吐き、良かった〜と手足を伸ばした。

そこまで身体中で喜びを表現されるとは思ってもおらず、大袈裟だなぁ…と思いながら微笑んだ。


こっちを振り向いた課長がハッとした様な顔をしてる。
何かあったのかと唇を閉め、小首を傾げた。


「ああ、勿体無い。いい笑顔だったのに」


いきなりそんな言葉を言われ、かぁーと顔が熱くなる。


いい笑顔だった?
私、そんなに笑ってた?


ドキンドキン…と胸が鳴りだして俯く。
課長の何気ない言葉に破壊力があり過ぎて、胸が騒いで仕方ない。

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