ワンス・アポン・ア・ナイト
色褪せたものから新しいものまで、目の前にはたくさんの絵が並んでいます。
「それにしても“絵師”には無理がありますわ。他にも何か仕事はあるでしょうに」
「庭師も料理人も『足手まといだ』って断られたんです」
「そんなに不器用で、今まで一体どうやって生きて来られましたの?」
あなたはやっぱり目を輝かせて、例の遊戯盤を指さしました。
「あれでは負けたことがないんです」
「それで生活できますの?」
「危険は伴いますけどね。負けなければそれなりに稼げます」
その目は少し鋭くて、積み重ねた年月を感じます。
「俺のことよりも、かなり一生懸命頑張られたそうですね。王妃自ら子育てされた、と町では評判でしたよ」
「ただ一緒にいただけですわ」
「聡明な国王になられました」
「きっと血がよろしいんでしょう。手先はかなり不器用ですけれど」
とても久しぶりに見る真っ赤な顔のあなたが、昔のあなたにそのまま重なって見えました。
「年をとっても、あなたは全然変わらないのですね」
「姫さまは━━━━━」
懐かしいその呼び方が、恥ずかしくて。
「もう“姫さま”なんて年ではありませんわ」
「俺にとって“姫さま”は、ずっと姫さまただおひとりです」