羽をくれた君へ。
私が笑うと2人も嬉しそうにしてくれた。


「それじゃあ、1発やりますか!!」


魁音がギターを持って私に言う。


「やる!!」


私は溜まっていた心の声を全部歌で吐ききった。


気持ちいい。


歌うことが。


歌うことを教えてくれたのはもちろん、魁音。


きっと魁音がいなかったら私はあの暗い部屋で1人絶望していたんだろう。


ヘッドホンを一日中つけて、周りの音を遮断して。


あの日、家を出て、魁音を見つけたから、その偶然が私の人生を変えた。


ものすごく魁音には感謝してる。


言葉に出来ないくらい。


だから、私の心の声を歌ったドロドロした歌を歌うのは今日で最後にする。


次からは感謝とか、明るい歌を歌いたい。


こうなりたいっていう自分の理想を乗せた、そんな歌にしたい。


だから、今日だけ許してください。


歌い終わると、スッキリして心が楽になった。


ギターをしまいながら魁音が私の方を向いた。


「雫。明日、一緒に行きたいところがあるんだけど。」

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