羽をくれた君へ。
私の隣に腰を下ろした魁音。


「あんまり早くても危ないんだからね。」


「・・・・・・・うん。そうね。」


「・・・・・・・雫?」


「・・・・・・・昨日の帰り、駅で反対側のホームにお母さんと知らない男の人が手を繋いでいたの。私に気づいても表情1つ変えずに笑っていた。・・・・・・・・せっかく変われると思ったのになー。」


私がそう言うと、魁音は私の顔を両手で挟んで自分の方を向かせる。


「変わったよ。雫は。俺は知ってる。だから、そんなの今更だろ?母親のことなんて。いちいちそんな事で気にするような雫じゃないんじゃない?」


「・・・・・・・・・今更?私、変われた?大丈夫?」


「うん。大丈夫。だから、雫の目、光らせてよ。今、真っ黒で俺の服にも勝ちそう。」


目線を下に下ろすと今日も魁音は全身真っ黒。


「ふふっ、今日も黒だなー。」


「いいだろ?黒好きなんだもん。」


「えー。でも、色が欲しいよねー。」


「じゃあ、今日俺に合うスニーカー探してよ。」


「うん。いいよ。」


「・・・・・・・・・ほら、戻ってきたよ。いつもの雫が。」


「あっ、・・・・・・・・笑えてる。」


関係ない話しているうちに自然と笑えていた。


「ありがと。魁音。」


「どういたしまして。・・・・・・じゃあ、ちょっと早いけど行こっか。」


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