羽をくれた君へ。
その下にブルーシートを敷いてお花見をする人。


・・・・・・・・・・怖い。


頭の中に桜の顔が浮かぶ。


あの日もこういう感じで事故にあったんだろうか。


綺麗な桜の下で真っ赤な血を流した桜。


想像しただけで体の震えが止まらない。


「雫。」


私の名前を呼んで魁音が私を抱きしめる。


「俺さ、このままじゃダメだと思った。どんなに両親が最低でも、妹のことを忘れようとするのは良くないよ。名前だって、言わなきゃ。桜ちゃんが悲しむ。・・・・・・・だって、こんなに綺麗なんだよ。」


上を見ると風で揺れている桜の木。


いつしか桜を見ても綺麗だなんて思わなくなった。


「綺麗って・・・・・・・思えない。」


「・・・・・・今はそうでも、きっと変わるよ。」


魁音が私のことを離すと、真っ直ぐ見て言った。


「桜ちゃんを思い出すから、見たくないって言うけど、それは逆だよ。桜ちゃんを思い出すために桜を見ればいいんだ。綺麗じゃなくても、見た方がいい。思い出していいんだよ?雫。」

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