羽をくれた君へ。
私は両親に絶望していた訳でも、自分を嫌っていて憎んでいた訳でもない。


ただ、私がいくら崩壊寸前の家族を立て直そうとしても無理だってことに今更気づいた。


心のどこかできっと前みたいに戻れるって思ってた。


でもそんなの無意味だったんだ。


もう、こんな家にいたくない。


高校卒業までなんて、無理。


今すぐにでもここからいなくなりたい。


お風呂からあがっても2人の言い争いは続いていた。


聞こえないと思ってるんだろうなー。


私は自分の部屋に入って黒のヘッドホンを付けた。


周りからの音を遮断して自分の好きな音しか聞こえない。


私は独り言のようにヘッドホンから流れる音楽を1人口ずさんだ。


私の場所なんてない。


ふと、私はヘッドホンを取って大きめのリュックに必要なものを入れた。


お金、スマホ、充電器、お菓子、参考書、ペン、ノート。


私の本能か分からないけど、もうここにいられないって思った。


明日はお父さんもお母さんも朝からいない。


帰ってくるのは二日後。


これなら家から出ていったって誰もわからない。


冬休みだから、ちょっと遠くに行けば友達にだって会わない。
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