羽をくれた君へ。
あの時は勢いで話していた。


どうしても、叶いもしないなんて言わせたくなかった。


だって、俺は雫の声の一目惚れしたから。


「そして勢い余って言っちゃったんだ。俺と一緒にあのステージに立とうって。・・・・本当にバカだよなー。無理だって。俺の方こそ無理だって。・・・・・・・・だって俺、直ぐに死んじゃうのに。」


智兄は俺の話を何も言わず聞いていた。


それが何よりありがたかった。


「あぁーーー。なんであんなこと言ったんだろう。・・・・・・・・俺の中にまだプロになりたいって言う気持ちがあったのかな。わかんねぇ。でも、叶えられないことに変わりはないんだ。」


俺がそう言うと智兄が口を開いた。


「魁音。お前は最初、雫に会った時なんで雫に歌えって言ったんだ?」


え?


まさかそんなこと言われると思って無かったから戸惑う。


「えっと・・・・・・・・雫、最初俺と同じ目してたんだよ。」


そう。


そうだ。


「目?」


「うん。目。俺と同じ瞳をしてるの。なんにも写してなくて、真っ黒で。それが勿体ないって思ったんだ。だって、あんなに綺麗に笑うのに。歌ってる時は思いっきり笑うんだ。」



< 92 / 183 >

この作品をシェア

pagetop