キミとひみつの恋をして
「サンキュー」と結城がテレビの前を陣取ったけど、礼を言うのはこちらの方だ。
結城のフォローのおかげで微妙な空気が和らいだのだから。
これを逃がすまいと、私は宿題の続きに挑む為、クッションの上に腰を下ろす。
「音は小さくね。2人は宿題するんだから」
「わかってまーす。あれ、バスケゲーム持ってなかったっけ?」
部長にたしなめられつつ、テレビ台の引き出しを開けながら結城が首をひねったのを見て、私は「それなら」と立ち上がった。
先週遊びに来た時、壁際に設置されている収納棚にしまってあるのを見たのを思い出し、私は小さな扉を開いて取り出すと結城に渡す。
「サーンキュー」
結城がいそいそとケースを開けてディスクを外せば、一連の流れを黙って見ていたらしい部長の目が怪しむように細まった。
「よく知ってたね。そこにバスケゲームのソフトが入ってるって」
あ、ああああ!
ミ……ミスった!
そうだ。詳しすぎだ。
パッと見える位置にあれば良かったけれど、ゲームは扉を開けた中にあった。
遊びに来たことがあると答えても、よく来ているととられてもおかしくない。
宿題始める前にやってましたと言い訳するのも苦しい気がして、助けを求めるように二ノ宮を見た。
彼は私の視線に気づくと、ゆっくりと部長の方を向き唇を動かす。
「さっき、俺が探し物してたんでその時に見たんだろ?」
ああ!
ナイスフォローをありがとう二ノ宮!
「そうですよー。さ、宿題宿題」
笑みを作って座り直した私は、まだ疑うような眼差しを向けてくる部長と、なるべく目を合わせないようにプリントを広げたのだった。