キミとひみつの恋をして
「あと、三輪君、ちゃんと食べてる?」
「……一応ね」
「練習量に合わせて、きちんと食べてね」
「わかってるよ」
うざったそうに眉根を寄せて答えた三輪君は、ドリンクで喉を潤すと息を吐いて。
「でも、最近あんまり食欲ないから」
少し、疲れたような声色でそう零した。
「夏バテかな……」
私がその可能性を口にすると、三輪君は「さあね」と興味なさそうに言ってまたドリンクを口にする。
とりあえずまだ顔色が悪いので、どんどん水分を摂るように言い残し、私はモップ片手にコートに汗が垂れていないかのチェックを始めた、その時。
「悪いな、遅れた」
上下黒のジャージに身を包む監督が体育館に現れた。
監督は扉のすぐ横で座り込んでいる三輪君に気づく。
「三輪、どうした?」
「ちょっと、水分足りないらしくて」
「脱水か。やばそうなら保健室行けよ」
指示し、今度はその視線をパス練習をしている部員たちに向けた。
誰かを探すように彷徨わせていた瞳がぴたりと止まると。
「二ノ宮、話がある」
監督は二ノ宮の名を呼んで手招きした。