キミとひみつの恋をして
部長は様子がおかしいことに気づいたのか、私と二ノ宮を見てから、部員たちに視線を送る。
「なにかあった?」
もしかしたら、一条部長の中では原因の予測はついていたのかもしれない。
けれど、彼は場を収めるつもりなのか、みんなに問い掛けた。
いち早く答えたのは、二ノ宮。
「なんか、俺と桃原が噂になってるみたいで」
冷静に、何でもない素振りで言うと、二ノ宮はストレッチを開始する。
少し眠そうにしながら話を聞いていた結城は、「そんなの、前から怪しくね?って笑って話してたじゃん」と、軽く笑った。
䋝田先輩はそれを聞いてクックと喉を鳴らす。
「俺も美羽ちゃんと噂になりてーなー」
なあ、美羽ちゃん?
立ち尽くす私の肩を抱いて、以前良くしていたように私を口説き始める䋝田先輩。
けれど、今までと違うのは、少し強引にその場から私を離すようにして歩いていること。
先輩が耳元で囁く。
「ヘタに動揺すんなよ。千尋がしらばっくれるつもりなら、俺らもうまく合わせるから」
その声に、私は周りにバレないように「はい」と呟いた。