キミとひみつの恋をして
一条部長がパン、とひとつ手を叩く。
「そんな話している暇があるなら、さっさと準備をはじ──」
「僕、見たんだよ」
朝練を促す部長の声を遮ったのは、三輪君だ。
私も、䋝田先輩も、一条部長も、二ノ宮も、結城も。
その場にいた全員の視線が、三輪君に刺さる。
けれど、たくさんの視線に臆することなく、三輪君は凛と立っていた。
その顔に、意味深な微笑みを浮かべて。
「部長、僕見たんです。昨日、二ノ宮先輩の家から桃原先輩が出てくるところを」
──ギクリ、と。
背中に嫌な汗が滲んだ。
二ノ宮は表情を変えずにいるけれど、多分私と同じく焦っているだろう。
だって、それを見られたということは……
何も知らない一条部長は、顔色を変えずに三輪君に返答する。
「2人は友達だし、俺も結城も二ノ宮の家で彼女を交えて遊んだこともある。別におかしくないよ」
にっこりと穏やかな笑みを浮かべる部長。