キミとひみつの恋をして
一条部長は優しげな目元を細めて三輪君を見つめる。
彼の態度と、その言葉に隠されたものを見極めるように。
そして、部長の唇が開きかけた刹那。
「三輪っちさ、そーゆーのはチー君の穴をしっかりと埋めれる選手になってから言おうか?」
普段、毒なんて吐かない結城が、部長の隣に立って言った。
表情は明るい。
でも、それが逆に怖い。
三輪君もまさか結城が入ってくるとは思わなかったのか、最初こそ面食らっていたけれど、すぐに鋭い視線を結城に向ける。
「今話してるのは規則の話だけど」
「あー、恋愛禁止? まあでも、俺はその掟だか規則だかはいらないって思ってる派だからさ。いっそこれを機になくせばいいんじゃね?」
軽く言って退けて、結城は時間がもったいないから早く練習しましょうと部長を促した。
䋝田先輩も部長の肩を叩いて指示を願えば、部長はコートに声を響かせる。
「とにかく、この件は俺に任せて。監督にも相談するから、みんなは集中! 始めよう」
気持ちを切り替えるようなハツラツとした声に、みんなはようやく朝練を始めた。
三輪君も納得がいかない様子でストレッチを始める。
──けれど、一度生じて広がった疑いは簡単には晴れない。