キミとひみつの恋をして
「……どうしたの?」
「桃原先輩って、結構したたかだったんすねぇ」
「もしかして、二ノ宮先輩とは体から入った関係とか?」
「なっ!?」
「あー、二ノ宮先輩、王子様ヅラしてるけど、裏ありそうだもんなー」
……やめてよ。
「確かにそんな雰囲気──」
「やめてっ!!」
身体中の血液がざわつくような嫌悪感が溢れて。
気づいた時には、私の手は、後輩の頬をひっぱたいていた。
私の声と、肌がぶつかる乾いた音に、さっきまで館内に響いていたボールの跳ねる音や部員たちの声が一瞬止まって……
それに気づいていたけれど、悔しくて、悔しくて。
「二ノ宮のこと、悪く言わないで」
唇を噛み締めて睨みつけた。
「こっ……んの、何すんだよ!」
頬を叩かれてキレた後輩が腕を高く上げる。
殴られると瞬時に悟った私は、目を閉じて、けれど動かずにいた。
二ノ宮の悪口をいわれて、その相手から逃げるなんてしたくなかったから。