キミとひみつの恋をして
彼の質問に、部長は苦笑した。
「桃原さんを退部にするのは圭介と結城が納得できないらしい。本音を言えば、俺もね」
優しい声で話して、部長の視線が真っ直ぐに私を捉える。
「君の支えは俺たちには必要だし、大会を控えて失いたくないのは君もだよ」
そんな風に思ってもらえてたとは夢にも思っていなかった私は、感激で目頭がじわりと熱くなり、慌てて口元を押さえた。
喉がつかえるような感覚の中、どうにか「ありがとうございます」と伝えると、それまで柔らかさを滲ませていた部長の瞳が一瞬揺れて。
「それに……三輪も言ってるから。マネージャーは残せばいいって」
驚かずにはいられないことを口にした。
「彼にとって、君は価値があるのかな」
一条部長が困ったように微笑むと、隣で二ノ宮が短い溜息を吐く。
「ターゲットの俺を、辞めさせたいだけだろ」
どこか面倒そうに零した声に、部長はそっと肩をすくめた。
「……そうかもね。でも、掟に従ってないのは事実だよ」
厳しい現実を突きつけると、部長は軋む音を鳴らし腰をあげる。