キミとひみつの恋をして
「申し訳ないけど、みんなを刺激しないよう、2人はしばらく距離をとって」
頼んで、床に置いてあった黒いリュックサックを手に取るとそのまま背負った。
そして、制服のジャケットから鍵を取り出し、それを二ノ宮の手に乗せる。
「鍵、任せるから相談するならここ使っていいよ」
ありがたい申し入れに私たちは立ち上がるとお礼を言って「お疲れ様でした」と頭を下げながら部長を見送った。
ピシャリと扉が閉まると、私たちは再びベンチに腰を下ろす。
見慣れた静かな室内で、私はポツリ、声を零す。
「別れろって言われなかったね」
監督にも、部長にも。
「言っても、別れるつもりがないのを知ってるからだろ」
特に部長は、それをよくわかっている。
白色の蛍光灯に照らされた倉庫の中で、2人で願ったから。
「まあ、そう言われて簡単に諦められてたら、リスク冒してまで付き合ったりしないよ」
そうだろ、と弱々しい笑みを浮かべて同意を求める二ノ宮に、私は小さく頷いた。
そして、湧いた疑問を声にする。
「距離とるって、具体的にはどうしたらいいんだろ」
「学校では、関わりを最低限にするとか、そんな感じだと思うけど……」
二ノ宮の答えに、私は困ったように唸った。
何せ、それらはすでにやっているからだ。