キミとひみつの恋をして
私の疑問に二ノ宮は首を縦にも横にも振らないで答える。
「……わかんないけど、あの一瞬を写真に撮ったってことは、桃原が来てることは知ってたんじゃないかな」
駅前まで迎えに行った時に見られてた可能性はあるかも。
二ノ宮がそう続けて、私はそういえばと思い出す。
合宿の時に彼は二ノ宮が私のことが好きなのでは疑っていた。
もしかしたら、何か起こるかもとその瞬間を待っていた……?
もっと警戒すべきだったと自責の念にかられていると、二ノ宮は大きく温かい手で私の頭をくしゃりと撫でた。
「そんな顔すんなって。これを機にさ、いい方向に変わるように頑張ろう」
後ろめたくて苦しいなら、その分部に尽くそう。
俺はプレイヤーとして、桃原はマネージャーとして。
そう告げた二ノ宮の声は励ますように明るくて、けれどその前向きさが切なく、胸を締め付ける。
二ノ宮が前を向くのなら、私も向こう。
今の状況を受け止めて、今できる精一杯で向き合っていこう。
二ノ宮となら、前を向いていける。
前を、前を。
呪文のように心の中で繰り返す。
塞ぎそうになろうとする心を叱咤するように。
部活に出る時は特に強く。
できるだけいつも通りに、笑顔で。
暗い顔してみんなのサポートをしてはいけない。
そう心掛けて翌日も、その次の日も、めげずに過ごした。