キミとひみつの恋をして


サラリーマンの疲れた顔も。

スマホに視線を落とし指を動かす学生も。

頬を撫で、制服のプリーツスカートを揺らす秋風も。

何も、変わってないのに。

心が不安に揺れるだけで、どうしてもこんなにも、世界が冷たく感じるんだろう。

電車の到着を告げるメロディーも、今日はなんだか悲しく聞こえる。

頑張ろう、と、二ノ宮は言ってくれたけど。

私と向かい合い、瞳を幸せそうに色付かせて微笑む姿は、最近はすっかりなりを潜めてしまっている。

そして、それはきっと私もそうなのだろう。

前を向くことの大切さを頭では理解できていても、心がそこに追いついていけない。


今夜、二ノ宮との電話で何を話そう。

どんな言葉を交わせばいいのか。

少しでも足を踏み外せば、何かを失いかねない気がして。

私はそっと溜め息を噛み殺した。


















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