キミとひみつの恋をして
secret.18
電車に揺られ、家に着くまでの間、ずっと頭の中にあったのは、何をされても文句を言わず、いつものように振る舞う二ノ宮の姿。
きっと二ノ宮から言わせれば、耐えて踏ん張っているのは私も同じ……なんだろうけど、選手とマネージャーじゃ関わり方が違う。
私はからかうように嫌味を言われる程度だけど、二ノ宮はわざとぶつかられたり、強いパスを投げられたりと、見てるだけで心が痛くなるものが多いのだ。
着替えるのもだるくて、制服のままリビングのソファーにもたれかかる。
2階から兄の気配がするけど、声をかける気力もなく、私はぼんやりとリビングの景色を眺めていた。
窓際に置いてある観葉植物のパキラは、先日母が購入してきた。
テレビ番組で風水特集をやっていたらしく、運気アップの為にと選んできたのだ。
とりあえず、私には効果がないのはここ数週間の出来事でよくわかった。
はぁ……と、深い溜め息を吐き出したところで、階段を降りる音がして。
ややあって、頭上からふと影が射す。
「おつかれモードか?」
「……ただいま」
覗き込むように見下ろす兄の質問には答えず、言いそびれていた挨拶を口にすると、兄はキッチンへと向かった。
そして、冷蔵庫を開けて長方形の箱を取り出すと、それを持って私の隣にポスンと腰を下ろす。