キミとひみつの恋をして
緩く軋んで弾むソファー。
兄は箱を開くと、シュークリームをひとつ手にして。
「食ったら元気出んじゃね?」
笑顔で言うと、シュークリームを押しつけるように私の手に乗せた。
続けて箱に手を突っ込み、自分の分を取り出した兄は躊躇うことなくシュークリームを頬張る。
「んでー? 原因は? 彼氏と喧嘩か?」
「……違うよ」
「じゃあなんだよ。話すだけでも楽になるかもしんねんだし、試しに言ってみろ」
クリームを零さないように器用に食べながら、特に気遣うような口振りでもなく世間話をするように悩みを吐き出せと促された。
デリカシーに欠けるけれど、変に気を使わないのも兄らしい。
私は短く息を吐き出してから、唇を動かす。
「……彼ね、バスケ部なの」
「ほー」
「だけど、うちは部内恋愛禁止で、本当は付き合ったらダメで」
「バレたのか」
ひとつ目のシュークリームを食べ終えて、特にからかうわけでも真剣な顔を向けるでもなく、兄はドラマの結末を訪ねるように聞いてきた。