キミとひみつの恋をして
secret.19
目覚ましのアラームが鳴り響く中、薄く目を開いて思い出すのは、二ノ宮の笑顔。
『バッシュは、俺が見つけたことにしてある』
私は知らないことにしていると、一条部長からのLINEのメッセージにそう書いてあったのを、ぼんやりとした頭で回想していた。
だから、私は知らない振りをしている。
二ノ宮が今履いているバッシュが、以前愛用していたものに戻っていても、そこに触れないように、気づかない振りをして。
バッシュが悪意によってボロボロにされたのは、本当は悔しいだろうし、心だって傷ついたはずだ。
でも、彼は笑っていた。
『桃原、お疲れ』
笑って、労って。
何もなかったように、元気そうに振舞った。
頑張ってくれている。
前向きに、これを機にいい方向にしようと。
必死に頑張ってくれている。
寝起きだというのに、こぼれ落ちそうになる涙を唇を引き結び堪えて、私は体を起こした。