キミとひみつの恋をして
「うるさいな。感情に流されて部に迷惑かけてるアンタには言われたくないよ」
攻撃的な言葉に、失敗してしまったと息を飲む。
緊張が走る2人きりの部室。
いつから始まっていたのか。
気づけば、遠くから風に乗って運ばれてきた吹奏楽部の演奏が聴こえて、招待試合のオープニングセレモニーが始まったことを知る。
「ごめんね。嫌な気分にさせて。始まったみたいだから、急ごうか」
無理に作った笑顔で告げて、必要なものを用意しようと、私が一歩後ろに下がったその刹那。
三輪君の瞳が仄暗さを滲ませ、獲物を見つけたように細まった。
そして、扉から背を離すと、こちらに一歩踏み出して。
「ねえ、本当は忘れ物なんてしてないんだ」
吐露された言葉に、ぞわりと背筋に嫌な感覚が走った。
眼前にある恐怖に、私がまた一歩下がれば、彼もまた一歩、こちらへと足を進める。
「結城先輩が、マネージャーは遅れて来るって話してるの聞いたから、僕もいなかったら二ノ宮先輩が疑って面白いことになるかなって思って来たんだよね」