キミとひみつの恋をして
午後になると、いよいよ男バスの出番だ。
一条部長曰く、三輪君には今日の試合が終わったら厳重に注意するらしい。
今後、あまりにも目に余るようなら退部となる可能性があることも告げると。
ベンチの後ろで私は、監督から指示を受けるスタメンに目を向けた。
スタメンには二ノ宮もいて、いつも通りに見えるけど……肘には、黒いサポーターがつけられている。
本当に大丈夫なのかと本人に聞いても、保健室で診てもらったから平気だと答えられた。
部長たちにもどうしたのかと尋ねられ、彼はその度に大丈夫だと返事をする。
それがまるで、自分に言い聞かせているみたいで、私は心配でたまらない。
サポーターをしているなら、痛みはゼロではないはずだから。
ウォームアップしている時は特に辛そうにしている素振りはなかった。
それなら、やはり二ノ宮が言うように大したことはないのかもしれない。
杞憂であればそれに越したことはないけれど、ずっと離れない不安を胸に、スコアシートを手に取った。
やがて、審判がゴールを指差し、ユニフォームの色をコールすると試合が始まる。
ジャンプボールで先制となったのは、冬高だ。
いい位置に弾かれたボールは結城が手にし、彼は一気に攻め込む。
ゴールを狙うも阻まれて、アウトサイドにいる二ノ宮にうまくパスした。
二ノ宮はそこからシュートすると見せかけて、走り込んできた結城に戻すと、そこからさらに部長へ流れるようにボールを回す。
ジャンプした部長は綺麗なロングシュートを決めて、冬高が先制点を勝ち取った。
場内が歓声に湧く。
もちろん、うちの控え選手たちもガッツポーズをしているのだけど……
その中で、三輪君だけは1人静かにコートを見つめていた。