キミとひみつの恋をして
声は、かけられない。
午前中のことがあるから尚更。
今はとにかく刺激しないようにと、私はスコアシートにペンを走らせた。
そして──
そろそろ前半戦が終わるという時に異変は起こった。
起こってしまった。
フェイクをしかけようとした二ノ宮から、呻き声が上がって。
「っ、ぅ……!」
ボールがその手から零れ落ち、招待校チームに奪われる。
けれど、会場の誰もが二ノ宮の異変に気づき、試合は審判のコールによって中断された。
監督に呼ばれ、堪えるように顔を歪めた二ノ宮が渋々といった様子でコートから出る。
肩で息をし、右肘を押さえながら。
「怪我したのか」
監督の鋭い声に、二ノ宮は午前中、ぶつけたんですと答えた。
三輪君は身を強張らせ、視線をひたすら床に落としていて、二ノ宮を見ようとはしない。
私は急いでコールドスプレーを手にし、二ノ宮のサポーターをずらし患部を空気に晒して──声を、失う。