キミとひみつの恋をして


「桃原。どうしたの?」


何か用事? と続けた彼の視線は、周りをさっと確認していた。

そんな二ノ宮の隣に立つ結城の手には、ベビーカステラがある。


「さっきは来てくれてありがとう」


午前中、オバケ屋敷に遊びに来てくれたことを話題にすると、二ノ宮の表情が僅かに綻んだ。


「ああ。面白かったよ。ていうか、結城の幽霊、あれ笑わせに行き過ぎ」

「え、俺、本気で驚かせに行ってんだけど」

「うん。柑菜も笑ってた」


というか、オバケ屋敷なのに出てくるお客さんがみんな笑みを零してるのは、間違いなく結城のせいだと思う。

柑菜から聞いた話によると、落ち武者幽霊役の結城はずっと笑ってるんだとか。

そして、これは出てきた時の二ノ宮の感想。


『手を叩いて爆笑してる落ち武者とか、ただのコント』


それを結城は怖い設定だと思ってやっていたらしい。


「マジか」


全く解せないといった顔の結城に笑って、少し柔らかくなった雰囲気の中、私は改めて二ノ宮を見つめる。


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