キミとひみつの恋をして
結城の背中を目で追っていた二ノ宮は、いまだ納得のいかない様子で私を見つめる。
「……どういうこと? 何でそんな許可降りたんだよ」
まあ……そうだよね。
何がどうして許可をもらえたのか、気になるのは当たり前だ。
納得のいく説明をしないと、二ノ宮は首を縦には振らないかもしれない。
だから、私は仕方なく、可能な範囲で話すことにした。
そろそろ書道部のパフォーマンスが始まりそうなので、二ノ宮と一緒に中庭の端へ移動する。
金木犀の下で、どこか懐かしい香りに包まれながら、私は唇を開いた。
「部長に頼んだの。せっかくの文化祭だし、今日だけ、二ノ宮と過ごさせてくださいって」
それは、本当の話。
だけど、少しの嘘が織り混ざっている。
昨日、体育館で私が一条部長にお願いしたこと。
『お別れをする前に、普通の彼氏彼女として、文化祭を楽しみたいんです』
『二ノ宮には』
『別れることは、まだ話してません。もしそれが叶うなら、後夜祭のあとに伝えようかと』
『そう……。わかった。みんなにも、邪魔しないように伝えておく』
付き合ってから二ノ宮とできなかったことを、この文化祭でできるかぎり叶えたい。
別れてしまう、その前に。